アニメ「オッドタクシー」の面白さを俺は見抜けなかったんだ…

雑記

登場人物はすべて動物で、広く女性受けを狙ったキャラクターデザインか? と雑な印象を持った。オープニングに流れる音楽はムーディで気怠げで、こういうのが“チルい”ってやつだろうか。オシャレで、一般的なテレビアニメとはだいぶ方向性が違う感じだ。

本編が始まる。主人公は不機嫌そうな顔をしたセイウチのタクシードライバー。乗ってきた客は「SNSでバズりたい」などと現代的バカの典型みたいな発言をかますカバの大学生。聞いていて恥ずかしくなるような話を続ける彼に対し、主人公はストレートには斬らないようだがチクチクと腐しつつ、深夜の街を進む。

これは何だ? サブカルをイジりながらなんかメインストリームっぽい立ち位置になっている「ポプテピピック」の向こうを張って、正統派サブカルアニメを見せてやるぜって感じなのか?

などと思いながら見続けると、地下アイドルに金を突っ込み続ける若者やらマッチングアプリでプロフィールを偽って交際相手を探す中年男やらが現れ、それぞれ不穏な展開に巻き込まれていく。なるほどこれは現代の病理ぽいやつのオンパレードであり、皆が皆不幸になって、今の社会はどうしようもないですみたいな感じでまとめる気なのではないか…と思ったあたりで、しんどくなって見るのを一旦やめた。3話あたりだったかな。

このアニメ「ODDTAXI(オッドタクシー)」は、2021年4月〜6月にテレビで本編が放送され、同年末には映画版が公開されたそうだ。

私がこの作品を知ったのは、その1年以上後。Amazonプライムビデオで配信が始まってからで、おすすめに何度も出てきたので気になって見始めたのだが、ファーストインプレッションは、まったくポジティブなものでなかった。

その後、(心が)暇なときに続きを見て印象は大きく変わり、目から鱗を落としまくったり感動のあまりもう1周見たり、2022年8月〜10月に行われていたリアル展示「オッドタクシー・エキシビジョン」に行ったりもした。

そして同時に、最初の方でこの作品のよさを見抜けず、また、Amazonプライムビデオに出るまで存在も知らなかった自分に、大きく失望した。こういう作品を早く知って、リアルタイムに楽しめるようになりたいものだよ。

オッドタクシーがどういう作品かを説明するのは、既存のカテゴリに簡単に嵌まらないのと、ネタバレを避けた方がいいことから、わりと難しい。Amazonプライムビデオでは「サスペンス」とカテゴライズされているようで、ミステリーやサスペンスドラマが好きな人は、その一種だと思って見たらいいと思う。

本作について「伏線」の回収がどうのこうのという評を目にするが、そういうレベルの先入観を持って見るべき作品ではないと思う。キャラクターの何気ない発言や行動の全てが後で別の意味を持ってくる仕掛けになっており、「伏線」という言葉を使うなら、伏線じゃない場面がどこにもないと言えるほどだ。それよりも、全てがパズルのピースのようになっている作品だと思って鑑賞したほうがいいんじゃないかなと思う。

バズりに執着する大学生も、地下アイドルに入れ込む若者も、マッチングアプリ絡みで身持ちを崩す中年男も、主人公のタクシードライバーの不機嫌そうな様子も、パズルが組み上がっていくにつれて別の面が見えるようになり、大きく印象が変わって、最後にさらにもう1回転する。アニメ本編で一旦組み上げられたパズルは、映画版で再度バラされて再構築され、さらに楽しめる。すごい!

本作を見ていて、「身の丈に合った生き方」のようなものをちょっと考えさせられた。皆、自分の器を超えたモノを求めてしまうことから、不幸になっていくのではないだろうか?

いやでも、持っている才能にふさわしい成功を収めつつありながら、そうならなかった人物もいたし、別にそんなところを特別描きたかったわけじゃないんだろうな。

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