聴き放題になったAudibleで、朗読版の「雪国」(川端康成)へ行ってみないか?

雑記

昨年の終わりごろに、朗読っていいものだなとあらためて感じた経験があり、Amazonのオーディオブック「Audible(オーディブル)」に入会していた。そのAudibleが、1月27日にシステムを変更して聴き放題となった。

これは正直なところ少々アテが外れてしまった感じがある。従来のシステムだと、会員には毎月1個「コイン」が供給され、これによって、お金で購入する以外にオーディオブック1冊を入手できた。半年ぐらでいいオーディオブックを集めたら退会しようと思っていたのだけど、聴き放題になった代わりにコインを貰えなくなってしまった。

せっかくだから、いっぱい聴いてやろうじゃないか…と思っているのだけど、なかなかこれが、聴くタイミングが難しい。オーディオブックは仕事のBGMに向かないし、30分未満ぐらいのちょっとした散歩にも、どうもうまいことスイッチが切り替わらない感じがする。

寝る前か、休日の長めの散歩のときに聴くとなかなかいいのだけど、幸か不幸か私は寝つきがわりといいので、実質的にオーディオブックが捗るのは休日の散歩タイムのみとなる。

と、「聴く時間」の捻出がわりと難しいサービスだなという印象なのだけど、30日間無料で利用できるので、ラジオや音楽に代わる「なんか聴くもの」を求めている向きには、おすすめしたい。

私がAudibleで何を聴いているかというと、今のところはもっぱら小説で、川端康成作品を中心に選んでいる。特によかった作品を、2つ紹介したい。

川端康成「雪国」(朗読:榊原忠美)

朗読する榊原忠美(ただよし)氏は、劇団クセックACTという劇団に所属し、ナレーターとしても活動されているそうだ。渋く穏やかな声と、全体的に抑制の効いた朗読に気持ちが安らぐ。よく知っている小説でも、文字を読むときとは脳内に広がる世界がまったく違ってくるのがオーディオブックというか朗読の面白いところだと思う。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」という冒頭が非常に有名だが、実際に読んだ方は、登場人物のひとりである葉子の「駅長さあん、駅長さあん」などの台詞も強く印象に残っていると思う。本作において葉子の台詞と声の印象はかなり重要で、男性がどう読むのだろうかと気になったが…なるほど朗読とはこういう読み方もあるのだなあ、と感心してしまった。ぜひ聴いてみていただきたい。

榊原氏は同じ川端康成の「伊豆の踊子」の朗読もされていて、こちらもとてもいい。「雪国」よりも散歩に合うと思われる。徒歩で旅するストーリーなので。

谷崎潤一郎「細雪」(朗読:楠 華子)

谷崎潤一郎は本作しか読んだことがないのだが、多く登場する「ふん」などのカギカッコ内をどういうニュアンスで読み取ればいいのかわかないことが多く、気になっていた。現代の感覚で「ふん」は反抗的な感じだが、文脈的にはどう考えてもそうではない。本作は昭和初期の関西の上流階級が舞台であり、想像の及ばない感じがあった。

オーディオブックを見つけて、これだ! と思って聴き始めたのだが、長編すぎて全部で32時間以上あり、まだ半分も行っていない。

楠氏のお名前を検索してもそれらしきプロフィールを見つけられないが、この作品の朗読に起用されるくらいだから、関西の方なのだと思う。地の文を読むスピードは気持ち速い印象もあるが、すぐに慣れるし、言葉の多い本作には、ちょうどいいのかもしれない。台詞部分は1人全役のラジオドラマのように演技されていて、「ふん」のニュアンスもさまざまなのだなと理解できる。楽しい。

とにかく長いが、おすすめしたい。しかし長い。

Audibleを「ビジネス書(自己啓発書)を効率よく読む」的な趣旨で紹介されることも多いが、その手のオーディオブックは今のところ未体験。少々興味はあるが、聴いてみたいタイトルが思い浮かんでいない。

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