本書が強いのは、これだけ茫洋とした印象の書名でありながら、1ページ目で語るテーマをビシッと言い切り、それが非常に魅力的であることだ。

書店で見かけて「ヨーロッパ思想? 気になるがややこしそうだな。何が書かれているのだろう?」などと思いながら手に取り、パラパラとめくってみた。「はじめに」の1段落目にはこうある。

「ヨーロッパ思想入門」と銘打ったこの本で、筆者が意図したことは、ヨーロッパ思想の本質を語ることである。

揺るぎない自信と確信が伝わる言葉選びだ。強い。続けて2段落目冒頭。

ヨーロッパ思想は二つの礎石の上に立っている。ギリシアの思想とヘブライの信仰である。

素人のイメージではいかにも複雑そうなテーマの根本を、2つに整理してしまった。強すぎる。ちょっと飛ばして3段落目冒頭。

では、第一の礎石であるギリシア思想の本質とはなにか。それはまず、人間と自由と平等の自覚である。

ここで購入を決定した。

そういえば小学校の社会科でも「民主主義の発祥はギリシア」ぐらいのことは習うが、当時の先生が言っていた「直接民主主義だと話がまとまらないから議会制民主主義になった」みたいな大雑把な話しか覚えていない。これは礎石から学びなおすべきでは、と感じた。

本編はなかなかに長く、正直のところギリシア神話の話などは少々退屈にも感じられて、今のところナナメに読んだ程度なのだが、今まさに新自由主義にとって代わられつつある自由主義・民主主義について、いくらか解像度高く理解できるようになる、気がする。

中でも興味深かった、ジョン・ロールズの「配分の原理」についての解説を引用したい(P.206より)。

社会主義社会の挫折から明らかなように、人間の自由を制限すれば、人々は活動への意欲を失い、社会は全体として疲弊する。それでは、どうすればいいか。ロールズの配分の原理とはこの問題への対処である。
すなわち、人々の自由な活動は社会的弱者の利益になるという条件の下においてのみ、その存立を許される、というのがこの原理の内容である。

ロールズはその理由として、「能力は個人のものではなく社会の共有財産であるためだ」という考え方を述べている。優れた人はたまたま優れた能力を持って生まれたが、そうはならない可能性もあった。1日中汗水たらして働いた者は力が求められたものであるが、働けなかったものは力なき者であり、両者には同額の報酬が与えられるべきである。

では力を持ちながら要領よくサボっている奴や、力をつけようとする努力すらしない奴はどうなるのか? といった突っ込みを入れたくなることも多いが、昨今多くの人が打ち出し、メンタリストもぶち上げる自己責任論のアンチテーゼとして捉えるべきかと思う。ちゃんと読みなおそう。